2019年08月24日

Tamiちゃんの怒涛な病院生活と新たな出発

 芝公園の花壇に赤やピンク、白い色のペンタスがいっぱい咲いていました。

 かたまって咲いている、1つ1つの花は小さな星のようなかたち。
 そのためか、花言葉は願いごと、です。

 星に願いを(夢はかなえられるでしょう……)。
 古いディズニー映画『ピノキオ』のスィートなテーマソングが浮かびます。

 熱帯で生まれたペンタスは日本の酷暑をものともせず元気に花を咲かせて、楽しませてくれる花です。

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「わたしはどこも具合のわるいところはありません。はやく家に帰りましょう」
 診察室でストレッチャーの上に横たわった96歳のTamiちゃんはさっきからなんども大きな声で言っています。

 担当の医師がSakuraやSatoshi、わたしに病状を説明し、今後のことについて話をしている最中のことです。

 救急車で病院に運ばれた彼女は、今回はなんとかCT検査などいくつかの検査を受けることができました。
 
 その結果、低ナトリウム血症と2種の細菌による感染症にかかっていることが判明。
 心配していた骨折などはありませんでした。肺に少し影があるということでしたが、年齢を考えればとくに治療は考えなくても……、とのこと。
 
 医師は、Tamiちゃんの入院治療について、場合によっては拘束などの苦痛を与えることや寝たきりになるリスクがあることなどを淡々と話します。

 話を聞いて迷い、涙をこぼしたSakuraは、兄のSatoshiに「決めてほしい」と訴えました。
 ところが医師は、「こういう場合はいっしょに暮らしているいちばん身近な人がきちんと納得して決めるべきです」と、きっぱり。

 そんなとき、
「これは人権侵害ですっ」
 診察室に、いらだつTamiちゃんの声が響きました。

 その声を聞いた医師やSakura、Satoshiやわたしは、重苦しい状況にもかかわらず思わず口元をほころばせてしまいました。あ、しごくまともなことを言っている、と感心して。

 やがてSakuraは、いまは家で、いまの状態のTamiちゃんの世話を継続していくのにはむりがあるので、ひとまず入院してもらって病気を治し、そのあいだに先に続くよい方法を考えたい旨、医師に話しました。

 こうして、彼女の約2週間の入院が決まったのです。

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 入院治療が始まったTamiちゃんは、ドア越しに廊下の端っこにいても聞こえる大声で、「家に帰りたい。連れて帰ってください」と言い続けていていました。

 わたしたちが順順といまの症状を説明すると、そのときは、「へぇー、そうなの」と納得したような反応があるのですが、忘れてしまうのか、また「家に帰りましょう」と言い始めます。

 また、点滴をしているときに手を動かして腕に差していた針が危ない状態となり、点滴中には手を拘束されるようになりました。

 か細い手がタオル地のような布製の腕輪に包まれ、ベッド脇につながれているのを目にするのはほんとうにやるせないのですが、家族にはその手をもんであげるぐらいしかできることはありません。

 臥床状態なので、尿道カテーテルを留置して導尿していましたからトイレに行かなくてもよいのですが、朝から晩までなんどもなんども、「トイレに行かなくては。行きたいです」と訴えます。

 トイレの問題は自尊心など、人の心の持ち方もかかわっているようにも思います。

 眠っているときは平穏ですが、毎日病室から、Tamiちゃんがあれこれ訴える声が間断なく聞こえてくる毎日。

 でもたとえばわたしが、自分ではなにがなんだかわからないうちにベッドに寝かされ、ひどい扱いをされていると感じていて、口がきけたら、できる限りの大声をあげて不当な扱いを訴えるでしょう。
 Tamiちゃんを見ているとついつい自分に重ねていろいろなこと考えてしまいます。

 毎日なんども言い聞かせていた成果でしょうか。入院の終わりのころは、「わたしは病気なので病院にいるのよね」といまのありさまを認識したようなもの言いをすることがありました。
 状況の変化に慣れるのに少なくとも2週間ぐらいはかかるのかもしれません。

 ただ、毎日、理学療法士さんがやってきて簡単なリハビリを続けてはいたのですが、入院2週目に入ったころには、ベッドの横に腰かけても上体がぐらぐらしてきちんとキープできない状態になっていました。どんどん体の機能が落ちてきています。

 Sakuraははやいうちから、またTamiちゃんといっしょに暮らすことを決めていました

 これまで何十年もいっしょに暮らし、双方が年齢を重ねていつの間にか娘が母親の介護をするようになり、その負担にいらだつことも決して少なくはなかったのですが……。

 こんどのことでいったん立ち止まって、よく考えた上での決断です。

 家で暮らすためには、せめてTamiちゃんに、立って自分で自分の体を支えられるぐらいの力がほしい、とか、車椅子から移動しやすいようにトイレのリフォームが必要、など、いくつかのハードルがあります、

 まずはTamiちゃんに高齢者の日常生活のサポートをする介護老人保健施設に入居してもらい、リハビリを続けて在宅復帰を目指すことにしました。

 Sakuraは、Tamiちゃんのケアマネージャーや病院のソーシャルワーカー、介護にやや詳しいSatoshiと相談しながら、いくつかの老健をあたります。
 そして、病院の退院時期と入居がうまくつながった施設に決めたのです。

 8月21日、水曜日。
 16日ぶりにしゃれたお出かけ着を着たTamiちゃんは見違えるように元気そうに見えます。
 介護タクシーの窓から見える外の風景に目を細めています。

 病院を出発してから40分くらいたったでしょうか。
 武蔵野の緑が残る街にある介護老人保健施設はきれいで広々としていました……。

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posted by shebrokeherwrist at 21:09| Comment(0) | 女性シニア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月10日

96歳のTamiちゃんが突然立てなくなって……

 梅雨が明けてからはずっとカンカン照り。
 暦の上ではもう立秋もすぎましたが、連日30℃を軽く越える夏の日が続いています。

「いやあ、セミの声がすごいですよ。夏真っ盛りですね」
 何日かぶりに朝はやく芝公園へ散歩に出かけたSatoshiが夏木立の動画を見せてくれました。

 ときおりさわさわと枝が風に揺れる木々のなかから聞こえてくるのは、ミーンミンミン、ミーンミンミンと大合唱するミンミンゼミの鳴き声。

 ツクツクボウシ、ツクツクボウーシの声も重なります。ジー、ジジジジジーというちょっとせわしない鳴き声も。これはアブラゼミですね。

 セミの鳴き声に耳を澄ましていると、ふとまばゆい夏のきびしさやすがすがしさ、はかなさを感じます。

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 7月28日はSatoshiの母親、Tamiちゃんの96歳の誕生日でした。
 バースデーケーキに立てた6本のロウソクを勢いよく吹き消したTamiちゃんはごきげんで笑っていましたが……。

 翌々日、ベッドから降りてトイレに行こうとして、足が立たず倒れてしまったのです。それまでは、杖をついてヨロヨロしながらも1人で歩いて行けたのですが。

 熱もありました。

 いっしょに暮している義妹のSakuraが、すぐに訪問診察をしてもらっているかかりつけの医師に連絡、
 見立ては、熱中症ではないか、とのこと。

 薬を飲み、容態が落ちつき、その日はお気に入りのリクライニングチェアに座ったり、またトイレまで行ったりできたのでほっと一安心したものの、翌日の早朝に再び転倒しているのをSakuraが見つけました。

 すぐ新宿にある大学病院に救急搬送。そこは、脳腫瘍などこれまでTamiちゃんがかかったほとんどの病気の治療をしてくれた病院でした。

 大学病院では、細菌による感染と低ナトリウムを指摘され、抗生物質と解熱剤、塩などを処方され、家に戻ります。

 というのも、(自分はどこも具合のわるいところはない、と思っているので)わけもわからず救急車に乗せられたTamiちゃんはひどく興奮して検査室などで大騒ぎしたため、かろうじてできた検査は血液検査だけだったのです。

 落ちつくまで……、と思った入院についても、
「こんなに元気な人は入院できません」
 と、断られてしまいました。

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 家に戻ったTamiちゃんは、歩けなくなったこと以外は以前とまったく同じ。
 薬が効いたのか、わりあい元気で、(自分が立てないことはすぐ忘れて覚えていないので)あちこち動こうとします。
 
 そのたびに、SakuraやSatoshi、わたしが、いまは1人で歩けないことを順々と話し、「はい、足をベッドの横に下ろしてね、もう少しお腰をこっちに寄せられる? 足はこっちに。あ、いいかも。うーん、どっこいしょ」と車椅子に乗せて移動するのですが……。

 部屋のなかはものがいっぱいあって、大急ぎで片づけたものの車椅子の通行には不向きですし、トイレはもっと難儀します。

 彼女の額には転んだときに打った痛々しい青あざがありますし、腕や足にも擦ったあとが。
 それに、ちょっと体を動かすと「痛い! 痛い!」と大きな声を出すので、どこか骨折しているのではないか、どこか体にわるいところがあるのではないかと心配はつきません。

 Tamiちゃんは、トイレから帰ってくるともう行ったことを忘れてしまうのか、ふだんからトイレの回数がとても多いのですが、前夜に何十回も、「トイレに行くの」と言われたSakura はほとほとまいってしまいます。

 そして、直面していることをしっかり考えるために一大決心をします。

 8月5日の月曜日。
 まずは、かかりつけの医師が話しをしてくれた比較的近くにある救急病院にTamiちゃんに入院してもらうことに決めました。

 救急車に乗せようとするとTamiちゃんがまた大騒ぎするため、かかりつけの医師の指示で抗不安薬を多めに飲んでもらったとか。

 その日、病院の救急車入り口で待っていたSatoshiとわたしが見たのは、ストレッチャーに乗せられ、ぐっすりと眠っているTamiちゃんの姿でした。

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posted by shebrokeherwrist at 12:32| Comment(0) | 女性シニア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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