2018年10月27日

あのとき、よく澄んで晴れわたった秋の空が……(Ⅱ)

 I さんのお兄さんの回顧展を開催していたのは閑静な住宅地のなかにある古い民家カフェ&ギャラリー。
 
 庭にはオブジェや椅子などがおいてあり風情があります。お店には靴を脱いで上がります。店内はナチュラルであたたかい雰囲気。ゆったりとくつろげそうな感じ。
 このお店は、もとはお兄さんと長年交流があった建築家の住まいだったそうです。

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 小さなギャラリーは2階にあります。
 I さんのお兄さんは日本各地を旅して心に触れる風景を素描しました。
 我が家にも結婚祝いにいただいた夜明けの朝潮運河にかかる黎明橋を描いた日本画がありますが、濃い青を基調にした独特の味わいのある作品を残しています。

 I さんとSatoshiは歳はほぼ同じくらい。彼は趣味でシャンソンを歌います。いまでも月に1回、シャンソンのお店で歌っているそう。

「あれっ、杖、どうしたんですか? もう持ってないんですか?」
 杖に寄りかかってないSatoshiを見て、I さんが尋ねます。

「お店の入り口においてきました。このごろはなくてもなんとかだいじょうぶですけど、持たないのもなんだか不安で……」
「ああ、だいぶよくなったんですね。よかったですね」

 画を見終わったあと、おいしいコーヒーを飲みながら3人でしばらくおしゃべり。
 ギャラリーに画を見にきた人が現われたのを機に、わたしたちはお店を出て、帰途につきました。

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 大江戸線の麻布十番駅で降りてから、スーパーマーケットのリンコスまで歩いてちょっと買いもの。

 その帰りがけ、ディーン&デルーカのカフェに寄ってトリュフチョコレートを買います。
 支払いをしていたらレジの横にあったハロウィーンのデコクッキー、クロネコを見つけてつい手が。ううーん、と背中を丸めたようなポーズがすごくかわいい。

 ちなみに26日、検診日。
 今回は血液検査だけでしたが、その結果は、要注意のところはまったくなし、でした。

「顔色もいいですね。体重も安定しているようですし、いまのところなんの心配もありませんよ」
 先生も笑顔で太鼓判を押します。

 それなのにSatoshiはその日の午後から、
「胸は痛いし、脚はだるいし。なんだか調子がよくないんだ」
 と、不調を訴えます。

 だいじょうぶ、と言われたのになぜでしょうか? 
 この2、3日ちょっと緊張してすごしていた反動かもしれません。
 それとも、検査がきっかけとなってふだんは気にしないようにしている現実の痛みやだるさを強く意識してしまうとか?

 Satoshiは、「どうしてなのかわからない」と言っています。

 ともあれ、来年になると手術からもう4年目です。
 1月には毎年、MRI やCT、血液、それに骨に異常があるかどうかを調べる骨シンチグラフィなどの検査をします。
 
 ふう。
 またまた、ちょっとナーバスになってしまうかもしれません。

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posted by shebrokeherwrist at 22:49| Comment(0) | 女性シニア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

あのとき、よく澄んで晴れわたった秋の空が……

 10月ももう末。25日、木曜日。
 久しぶりに朝から青い空が広がるとても気持ちのよい日でした。

 さわやかな空気を吸いながら、8000歩くらい歩いた朝の散歩から帰ってきたSatoshiはいつもどおりのくつろいだ顔。
 でも心の内はちょっと違っているかも?

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 彼はいろいろあったせいか退院してからほぼ3か月ごとに呼吸器外科や消化器内科の検診を受けています。そして、翌26日はその検診日。

 このごろは、痛みはまだ感じるものの、だいぶ元気になってきたという自覚もあるようです。ただ、主治医から「だいじょうぶですよ」と言われるまではなんとなく心がざわつくみたいで……。

 ともあれこの日は、知り合いのデザイナー、 I さんのお兄さんの回顧展を観るために流山市へ出かけました。

 大江戸線に乗り、新御徒町からつくばエキスプレスに乗り換えます。車窓から見える秋空を眺めているといろいろな思いがよみがえります。

 Satoshiがついナーバスになるのもむりもないかもしれません。ほんとうにあのときは次から次へといろいろありましたから。

 彼が肺がんの治療を始めたのはちょうど4年前の秋。ハロウィーンのころです。
 入院して、がんを小さくするために化学療法と放射線治療を続け、年が明けてそうそうに肺がんの外科手術。

 化学療法などによる副作用もほとんどなく、髪も以前のままで落ちついて迎えた外科手術。でも若いころの肋膜炎や喫煙などのせいで思いのほか肺がくたびれていたのか手術は12時間かかり、しかも術後ほどなく膿胸になってしまいました。

 胸腔開窓の緊急手術を受けます。痰を取るために気管切開も。そしてせん妄となります。

 その後は、脇の下に開けた大きな穴にピンセットでガーゼを入れて傷口をきれいに拭きとり消毒する毎日。
 せん妄から脱し、病院の中庭にあるサクラの花が咲き始めるころから、脇の下の穴の傷口を小さくするための装置をつけて治療。1か月弱のあいだ続きました。

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 そして、みずみずしい青葉や色とりどりのバラに目を奪われるころ、むりを言っていったん退院したものの、夏の初め、細菌感染によって背中の神経にダメージが。歩けなくなって整形外科に緊急入院します。

 すぐに手術をしましたが、頭や首、背中をきっちりカバーする鎧のようなコルセットをつけてベッドに横たわる身に。

 約1か月たったころ、コルセットをつけ、車椅子でリハビリテーション病院に転院。膿胸の治療もまだ続いていました。

 それから3カ月、地道にリハビリを続けたSatoshiはなんとか杖をついて歩けるまで回復します。

 そして彼は、奇妙なコルセットをつけたままやっと家に帰ってきたのです。
 検査入院したあの秋からちょうど丸1年たち、新しい秋の青い空が広がっていました。

 そのときから、住んでいる街で、歩くリハビリが始まりました。
 いっしょに歩いた商店街、街角や路地、疲れて休み、パルスオキシメータをチェックしたベンチ……。

 コルセットをもう外してもよい、と許可がでたのは秋から冬へと季節が移るころのことです。

「流山セントラルパークですよ。降りますよ。なにをぼぅっと考えているの?」
 あっ、ごめんなさい。
 Satoshiの声でわたしはハッといまに戻ります。

 そして2人が降り立ったのは、平日の午後のせいかあまり人影のない新しい駅でした。

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posted by shebrokeherwrist at 22:09| Comment(0) | 女性シニア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年10月21日

トリカブトの花

 朝の散歩で立ち寄る芝公園、そのタワーホテルの芝生広場のフラワーポットもすっかり秋もよう。いつもながら目を楽しませてくれます。

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 その日の午前中、パティオの近くにあるなじみの花屋さんに花を買いに行っていたSatoshiが、いつものカサブランカや、ピンクの花びらに赤い絞りもようが入ったカーネーションなどといっしょに珍しい花をかかえて帰ってきました。

 少し日に晒されたような紫色、中世の騎士がかぶる兜のような筒状の花びら、ギザギザと切れこみのある葉っぱ。
 あの、トリカブトの花です。

 わたしも手元でしげしげと眺めたのは初めて。
 ちょっと見には儚げでわびしさのある秋の花、という感じ。いまの季節にぴったりです。

 時期柄、花屋さんの鉢ものの売り場の方にはすごく大きいのや小さいカボチャが所せましと並んでいたとか。
 カボチャもいいけど……。

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「なにかおもしろい花はないかなぁ?」
 花屋さんのお姉さんに買った花を包んでもらいながらなにげなく尋ねていたら、花屋のおじさんが奥からひょろひょろっと現われて、
「これはどうですか?」
 と見せてくれたのがトリカブトの花。

 トリカブトは、花はふつうの生け花や風情を楽しむ茶花などにつかわれますが、ご存知のとおり猛毒を持つ植物です。花や葉などはもちろん、とくに根に強い毒性を持っています。

「注文されたお店の飾りの花にトリカブトを混ぜてアレンジして届けたんですよ。好ききらいがあるのであとで叱られるかな、と思ったんですが、いえ、かえってお客さまと話が盛り上がってよかったです、と喜ばれて……」
 花屋のおじさんはにやっと満足顔。

 ふうん。
 そういえば日本でも昔、トリカブト殺人事件がおきました。話題性はかなりあります。

「花屋のおじさんがまけてくれたんだよ。それに、アレンジ用のきれいな葉っぱもつけてくれたし」
 Satoshiも紫色の花を見ながらなんとなく楽しそう。

 トリカブトの花は5本ありました。長い茎を生かして細長い花瓶に自然な感じで投げ入れます。それなりのボリュームもあります。

 山野で咲いていた素朴な花はいま部屋の片すみでひっそり息づいています。
 けっこうかわいいけれどもじつは曲者。そんな不思議な風趣を醸しています。 

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posted by shebrokeherwrist at 15:15| Comment(0) | 女性シニア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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